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『銀座VS巣鴨 店頭に展示された服 100着調査』

銀座ブランド通り VS 巣鴨地蔵通り商店街 ~銀座の高級、巣鴨の癒し

 女性用の洋服を販売するお店の店先やウインドウに展示された製品の色は、場所によってどのような違いがあるのでしょうか。
 当然、こうした店頭に飾られる洋服の色は、その街で買い物をする女性の目を引き、好ましいと思われることを目的としています。
 ただ街によって対象となる人が違い、また売り方に対する考え方がそもそも異なる、製品にはそんな要素があります。実はこれが一番見事に表現されているのモノの一つが、この店頭でお店の製品を「代表して」飾られている洋服、そしてその色なのです。

 今回は、いささか極端な位置にある両地点。銀座と巣鴨の2つの街で調査を行いました。
 銀座は、有楽町方面から入り、中央通りに抜ける「銀座柳通り」「銀座マロニエ通り」「松屋通り」の3筋。「カルチェ」「ブルガリ」「バーバリー」など特にブランドに詳しくない方でも知っている海外高級ブランドを中心に、旗艦店が建ち並んでいます。
 歩いている人は、7割がたが女性。学生風の方はあまりおらず、20才代から80才代と思しき人まで全世代の方が観られるますが、やはり50歳以上の女性の方の姿が目立ちます。
 
 一方、銀座巣鴨商店街。言わずと知れたおばあちゃんの原宿。巣鴨から歩いて約5分。白山通りから入る1km弱続く商店街は、お年寄りを対象にした洋服から食べ物、小物やマッサージ、保険屋さんに至るまでのお店がびっしりと並んでいます。その中でも最多のジャンルはもちろん洋服。通りを歩くは70才代、80才代を中心にした女性が圧倒的で、10人に一人ほどの割合で、20才代~70才代までの男性が混じっているような印象です。

 さて両者の店頭に並んでいた洋服の色は、下記のグラフの通りでした。

銀座、巣鴨調査(小).jpg

 左が銀座。右が巣鴨の結果です。
 結果に分かりやすい違いを出すべく、極端な場所選びを意図的に行った結果であるものの、うれしくなるくらい異なる両者の結果となりました。
 まず銀座。

 1位 黒
 2位 白
 3位 ベージュ
 4位 グレー
 5位 青

 という結果でした。約5分の1が黒い洋服を展示していました。
 黒の特長は、この色を身に着けるうえで、次のようなことがあります。

 〇どんな色との着合わせにも対応できる万能の色
 〇顔を引き立たせてくれる効果がある
 〇高級感、重厚さが最も伝わる
 〇全身が締まって見える

 というもの。女性らしさの演出や、男の保護欲を刺激したり、軽やかさを表現したりという効果はなく、他人との距離を作る色でもあるのですが、50歳から上の、お金をお持ちの女性が対象と考えてみると、黒は特にこの層の方たちにとっては色彩心理的には至れり尽くせりの色であることが分かります。
 さらに黒は身につけた人に、高級感と重厚なイメージを与えるとともに、黒い製品自体、高価格であることを相手に伝え、納得させる色でもあります。お店、特に高級店にとっても実にありがたい色なのです。
 ちょっとお高いお弁当、あるいはお正月のおせち料理、あるいは高級な和食がすべて黒で縁取りされているのも、一つにはこの効果を狙った結果(無意識の場合も多いのですが)であると言えます。

 一方、巣鴨の洋服店の店頭に展示された洋服の色。
 
 1位 紫
 2位 グレー
 3位 赤
 4位 ベージュ・ピンク(同位)

 という結果で、銀座で圧倒的な人気のあった黒は、ほとんど店頭には登場しません。
 まず、この街で黒は「高級感」というより、その重厚さ=若さがない、弾まない、という印象が好まれていないということになるのでしょう。
 1位になった紫は、「やはり」というものでした。
 女性は基本的に、全世代はピンク系統の色を好みます。
 ピンクは女性ホルモンを刺激し、女性に若さと癒しを与えてくれる色。そのうえ「愛情」というイメージキーワードを持っています。
 ただ、各世代で最も好まれるピンクは異なり、若い世代が明るいトーンのピンクであるのに対して、年齢が上がるほどに、赤みが増して、紫に近づいてきます。これには物理的な理由もあるのですが、これは長くなりますので、ほかの機会に。
 また紫は、健康上の不安がある方が非常に気になる色。身体の癒しを求める場合に気になって仕方がなくなる、そんな色でもあります。
 美空ひばりさんが体調を悪くされていた晩年、部屋中を紫にしていたのは有名なお話です。
 つまり、60歳から上、「女性ホルモンを活性化させ=若さ」「健康面を癒す」紫が店頭に飾られているのは、ごく自然に成り行きなのです。
 4位にピンクが入っているのも同様の理由ですが、ピンクの場合、癒しの効果よりも「愛情」のイメージが強くなります。
 皆さんも巣鴨以外、女性の割と高年齢の方を対象にした洋服店がありましたらちょっと店頭をチェックしてみてください。まず間違いなく、紫の洋服が展示されているはずです。


ファッションカラーチェック 人気1位の京急VS最下位西武池袋線

 『沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿』(首都圏鉄道路線研究会/SBクリエイティブ株式会社)という話題の本があります。
 内容は首都圏18路線を対象に、「平均通過人員」「乗客増加率」「接続路線」「遅延回数の少なさ」「混雑率の低さ」など9つにの評価基準で路線の順位をはじき出したもの。
 この順位は、沿線の土地の価値の一つの表れと言っても良いでしょう。単純に高い土地に住んでいる人は良い生活をしているとは言えませんが、人気のある土地に住むからには、それなりの高い生活レベル、それに伴う代償(お金)を払っている方が多い、ということは言えるかもしれません。

 第1位となったのは、京急本線。
 東京都と羽田や神奈川県一帯を結ぶ大動脈の一本です。品川、横浜、川崎、羽田など沿線には名のある大きなターミナル駅も並ぶ、駅数約50駅の路線。
 そして首都圏18路線の格差の、残念ながら最下位に沈んだのは西武池袋線。池袋を起点として行きつく先は埼玉県秩父地方。駅数約30駅。
 一路素敵な横浜へ!という京急本線。一方、西武池袋線の行先は山深い秩父地方。グルメ、異国情緒、海の横浜。炭鉱、山、焼きトンの秩父。
 軽やかでおしゃれな服装でお出かけ!の横浜に対し、暖かい上着には履き慣れたクツ、遠足のような覚悟が必要そうな秩父。
 並べただけでも不利なのは理解できるが、まさかの最下位。住民としては納得できないかもしれないが(私です)、現実の結果でですので、受け止めるしかありません。

 こうなれば1位と最下位(18位)の調査です。
 両沿線にお住いの女性の皆さんが着用されている服装(上着)の色を調査してまいりました。

 結果は次の通り。

沿線比較1.JPG

 それぞれ100人の調査ではありますが、実に見事な分析外のあるデータとなりました。
 この服装の調査から分かることは、いくつかあります。
 例えば「どんな傾向性の方が多いのか」もその一つ。
 まず、どの色を好むかによって、その方の性格がある程度わかります。
 そして、色の流行に、どの程度敏感に反応する方が存在するか、ということもその傾向性を見ればわかります。
 今回は、2つ目の「色の流行」への反応の傾向を見てみましょう。

 人の好む色には、それぞれ個人が好きな色とは別に流行に左右される部分があります。
 これは「今年はこれが流行っている!」という情報や「社会的な状況:景気やイベント、事件など」に左右される傾向があります。

 これに対する人の反応は、様々ですが、大きく3つに分けることができます。
 
色彩流行への反応.JPG
 
 この区分けで今回の両駅の色を見てみましょう。
 日本では、ここ数年、長く続いていた不況(のイメージ)の影響で、飽きのこない長く使用できるオーソドックスな色が使われる傾向がありました。ファッショにゃ車などはその代表的な存在です。 これに変化が現れたのが約3年ほど前。明るいパステルカラーなどが洋服や雑貨、パッケージなどにも多く登場するようになり、景気の回復とともに、そこにややシックなニュアンスが加えられた高級感のある、明るい色も見られるようになりました。
 そんな経過を頭において、それぞれの沿線のファッションカラーを見てみると、京急線により多く、明るいパステル、高級感のある明るい色の傾向がみられるようです。
 つまり、よく言えば変化に反応し、新しいものを楽しむ方々、あえて悪く言うなら流行に影響されやすい方々が明らかの言いく在住しているのが分かります。
 ファッション業界から言えば、どちらの地域がありがたいか、一目瞭然。もちろん京急線に新規店、あるいはアンテナ的なお店を開きたくなりますね。
 

 


『車のボディーカラー100台調査』

新宿歌舞伎町周辺 VS 神宮外苑&都下某マンション

~車の色でわかる景気回復具合と、女性進出状況

 今回より、新テーマ(新タイトル)にて書かせていただきます。
 テーマは色彩街頭調査。
 今回は、色彩の観察を行ったのは、車のボディーカラーについて。
まずは都内2か所の比較調査を行い、この結果をさらに比較するために都下の某マンション駐車場と比較を行った。

調査場所は
・東京都新宿区:歌舞伎町横、ロッテバッティングセンター横の駐車場
・東京都渋谷区:神宮外苑 絵画館駐車場
・東京都都下某マンション駐車場

 まずは結果をご覧ください。
 1か所目は新宿歌舞伎町すぐ近く。知る人ぞ知る、ロッテ・バッティングセンターの横に、奇跡のように取り残された平地が存在し、そこは数百台が駐車可能なコインパーキングとなっています。
 周りはホテル(ラブバージョン)とマンション、それに風俗やマンションなど。企業のオフィスビル的なものは比較的少なく、「新宿的」な用件で来る方々の駐車場といえるでしょう。簡単に言ってしまえば日本一デンジャラスな駐車場です。

新宿.jpg

 今回、比較対象としたのは、神宮外苑にある絵画館横の駐車場。こちらも周りにいわゆるオフィスはなく、絵画館はもちろんですが、軟式野球場やゴルフ練習場、テニスコート、フットサルなどのスポーツ施設が存在しています。また外苑をランニングする方も多数いらっしゃり、この目的で車を駐車されている方もいると考えられます。

神宮1.jpg
 
 さて、両所の結果は以下の通り。

歌舞伎町グラフ.jpg

神宮グラフ.jpg

 大きな比率の差は残念ながら見つけられませんでしたが、このボディーカラーからは、実に様々なことを読み取ることができます。
 例えば、ほぼ一緒の比率から次のようなことが分かります。

(1)景気は今一つ良くなってはいない
(2)女性の利用客が非常に少ない

 という2点が分かります。
 
 なぜボディーカラーから景気がわかるのか。
 実は車のボディーからと景気の変動についての数十年にわたる統計資料が存在しています。
 これによると、
 ・景気が良い=有彩色(色付き)の車が増える
 ・景気が悪い=無彩色(白や黒、グレーなど色のない)の車が増える
 という法則があります。
 車の場合、メタリック色になりますので。グレーは銀色ということになります。新宿、神宮ともこの無彩色の車が8割から9割となっています。これは、バブルがはじけた4,5年後、長期的な不況の入り口に入ったころの数値とほぼ同じレベルです。

 そして(2)の女性の利用者が少ない、という点。女性の利用者の一つの特徴は、軽自動車の利用が多いという点です。近年特に軽自動車も女性をターゲットにしたものが多く発売され、それらは例外なくカラフルなラインナップとなっています。もちろん都内においては、比較的収入の高い層が多くいると思われ、その分、(カラフルな色が似あわない)女性も大型の車に乗っていることも考えられますが、それにしても女性が多いのであれば、一定のレベルまでカラフルな車が増えてくるはずです。
 ちなみに東京都下の某マンションで観察したボディーカラーの数値は以下の通り。

都下グラフ.jpg

 有彩色の車の割合は5~10%増加し、色も多彩です。
 もちろん、車の購入サイクルは洋服ほど短期でなく、数年から十数年に一度ということを考えると、過去に引きずられたデータであることは考えられます。今の景気観を皆さんがどのように感じているかが現れるのはたぶん数年後になることでしょう。また同じ場所で観察することにしたいと思います。 

「コク」は何色?(第2回)

 前回に続き「コク」は何色をしているのか、をお話ししたいと思います。
 今回はまず、コクといえばお馴染みの「出汁」製品が何色をしているのかを見てみましょう。

写真3.jpg

 皆さんも、たぶんどこかでご覧になったことのあるパッケージが並んでいます。実に分かりやすい。そう、出汁の世界ではコクの色は決定済だったのですね。コクは赤。ほとんどすべての製品がこの解釈の元、パッケージを作っています。
 しかし、不思議です。私たちがおいしい出汁の効いた料理を目にしたとき、赤を連想することはないし、そもそも料理の周辺でこれほどはっきりした赤を目にすることもあまりありません。お椀の内側が朱色という場合はありますが、せいぜいそのくらい。そもそも私たちが出汁と言われて思い浮かぶ映像は、あの黄金色の液体の姿でしょう。それがなぜ、揃いもそろって赤い色を中心にしているのか。

 これには、出汁のもとの元祖ともいえる「ほんだし」の存在が大きく影響しています。「ほんだし」のキャッチフレーズは「和風だしのもと」。つまり和の基本中の基本を作る味、を表現したかったのです。和を象徴的に表現する色の一つといえば赤。この色の中で最も目を引き、しかも和の世界をイメージできる赤=味の素の「ほんだし」というイメージを「ほんだし」が定着させることに成功したのが、その後の他の製品にも大きく影響しています。

 さらに赤は販売色の王様。これを最初に取った製品はトップセラーでありながら、ロングセラーになる確率が非常に高いものです。味の素は塩の世界でも赤=うまみ調味料という世界も確立しています。カップヌードルも白地に赤の組み合わせによって、あの厳しいカップ麺の世界でロングセラーとなっています。
 「ほんだし」は、出汁=和=「ほんだし」というイメージを定着させることによって、出汁の世界では、少なくとも赤でなければ出汁に見えない、というところまでイメージが定着してしまっています。しかし出汁は、コクの世界においては代表的ではありますが、あくまでも一つのジャンルでしかありません。

 ではそのほかのジャンルにおいてコク=○色を定着させた製品はあるのか。実はほとんど存在していません。先ほども申し上げましたが、このジャンルでコクといえばこの色!と定着させることができれば、いまだに「ほんだし」がいまだ不動の地位にいるような世界を作ることができるでしょう。コクを考えるうえで大切なのは、一つの方向として、
 
 コク=「らしさ」+「深み」・「上質」
 「深み」・「上質」=「高級感」

 ということが言えそうな気がします。
 「らしさ」とは、その製品「らしさ」のこと。製品のジャンルを全く想起できないような色では、消費者に正体が伝えられず、簡単に言ってしまえば「手にも取ってもらえない」商品になってしまいます。

 辛い製品は辛い色。
 クリーミーな製品はクリームの色。
 オレンジ製品はオレンジ色。
 
 簡単に言ってしまえばこうした「らしさ」がなければ、まず製品は理解されません。
 そのうえで、差別化として、そのジャンル特有の「コク」を乗っける必要があるわけです。

 (次回:『ビールの旨さは「キレ」と「コク」?』に続く

「コク」は何色? 第1回

「濃厚」から「コク」へ

「最近好む味は何ですか?」

 こんな調査がよく行われている。ちょっとしたテレビネタになりそうなテーマですが、実はこの「コク」の存在、最近はその影響たるや非常に大きく、「コク」を反映した現象が多方面にあらわれています。
 テレビCM、店頭に並ぶ製品に飲食店。このアンケートの結果を参考にしながらこうしたものを観察していると、いろんな場面で「コク」が叫ばれ、その熱狂振り、集中振りに驚かされるます。
 まずは、毎年行われている「好む味」の結果を見てみます。最初にご紹介するのは3年前の2013年に行われた「好みの味に関する一般調査」。この調査では「今の好み」だけでなく同時に「以前好んでいた味」についても聞いています。

表1.jpg
※「好みの味に関する一般調査」(対象:東・名・阪の成人男女600名)

 これまで多くの人に好まれていた「濃厚な味・濃い味」から「コク・旨み・深み」に見事に移行しているのが分かりますね。実はこの傾向は、これ以降つづいていて、様々に行われている調査でも、「コク・旨み・深み」は変わらない「人気ナンバーワン」の味になっています。そういえばコッテリよりも、最近は奥行きのある、奥深い味を前面に出した食べ物が注目されることが多いようにも思います。

 この味の大きな変換期となった2012年。「濃い」から「コク」に好みが移った背景に、いったいどんな出来事があったのでしょう。

 一つには2012年にピークだった「濃い味」に対する反動で、飽きや、健康に対する懸念から、濃い味を好んでいた人々が「コク』に移ってきたというもの。「コク」は「濃い味」とは反対のイメージで、作り手のこだわりや繊細さ、やさしさが感じられる味です。濃い味も「こだわり」や手間のイメージはありますが、繊細さ、やさしさといった要素はあまり感じさせません。その点「コク」は作る過程で手間(付加価値)もかかり、また、そもそも高い技術・経験が必要なイメージもあります。つまり「本物」への回帰もそこにはあるでしょう。

「コク」は何色をしている?
 
 さて、本サイトの目的は「色彩」の面から様々なことを観察、分析していくことですが、この味の好みの変化は、実に興味深い変化を観察することができます。簡単に言ってしまうと、

 「コクはいったい何色をしているのか」

 という点です。食料品において「われこそがコクを表す商品(色)である」ということが言えればヒット商品になれる、という状況では、特に商品のパッケージにおいて、みんながこれこそ!と思うコクを感じさせるデザイン、特に色をつけることが非常に重要なこととなります。
 例えば「ビール」「シチュー」「ソース」。コクを最大の売り!にしている製品は多くありますが、中でも多種多様な戦いを繰り広げているのが、中でも熾烈な戦いを繰り広げているのが「缶コーヒー」の世界です。
 まずは、「コク」と銘打った製品を眺めてみましょう。

写真1.jpg

 ある製品は、金色に輝き、また、ある製品はコーヒー豆を感じさせる茶色。と思えば今までも数多く見てきた黒はあるし、プレミアム表現の定番となったロイヤルブルー、果ては赤やクリーミーな白、微妙なブルーグリーンまで。まるでコーヒーパッケージの色見本のようになっています。
 まさに色の戦い。しかし注目の売りキーワード「コク」については、どうも決定力が欠けているような気もします。

食べ物、飲み物は「らしさ」がないと売れない

 実は、色彩から見た売れる商品の条件の一つに「らしさ」の表現というものがあります。
 簡単に言ってしまえば製品パッケージは缶のデザインに「らしい」色が使われていないと売れない、というもです。例えば、

 辛いものは辛さを感じさせる色。
 甘いものは甘さを感じさせる色。
 濃厚なものは濃厚さを感じさせる色。

 これは味覚色といわれるもので、上の例でいいますと、
 辛い=赤と黒(中辛=赤と茶)  甘い→黄色・ピンク   濃厚な→色を濃くする

 といった定番の色や手法が存在しています。
 つまり赤と黒を中心に置いてデザインを展開すれば、大多数の方に一瞬で「辛い」製品だということが伝わり、辛さを求めているお客さんにきちんとアピールできる事になります。例えばこんなパッケージ。

写真2.jpg

 私などこのパッケージをみただけで、食べたわけでもないのに、じんわりと汗が出てきます。素晴らしい色の効果です。
 では「コク」を売りたい缶コーヒーのジャンルでは、どうしてこんなにも多彩な色の表現になってしまうのでしょうか。
 その理由は、コクの味覚色が定着していないことによります。もちろん味としての「コク」の世界は日本において、特に和食でお馴染みの存在です。しかし、その表現が辛い、甘いのようにシンプルではなく、素材にしても色々なものが複雑に交じり合って、その拡がりや余韻、奥深さが再現されています。
 また実際に「コク」のある食べ物として私たちの目の前に出される時も、いろいろな色をしています。基本的には野菜などの素材の色にわずかに「コク」が付加された色というのでしょうか。つまり素材によって「コク」の色はいくらでも変してしまいます。

 つまり色で言えば、いくつもの多くの色が重なり合って、なんとも微秒な色となっている、それが「コク」でもあります。ですからそれを分かりやすい色として表現する場合の味覚色が実はまだ決まっていないのです。

 これは逆に言えば凄いチャンスでもあります。 
 その昔、キリンがこげ茶のラベル(ラガービール)で苦みを表現して長く君臨し、スーパードライが銀色でキレという言葉をわがものにし、業界ナンバーワンに躍り出たように、コクはこの色!をしている、という認識を製品を通して広く認識させることができたとしたら。たぶんその製品は、人々がコクを好む限りナンバーワン製品であり続けることができるでしょう。

(第2回 『コクの代表「出汁」は赤?』に続きます)

濃くない「濃いシチュー ホワイトショコラ」

先日、面白い製品を見つけた。
シチューの人気ブランド「濃い」シリーズの冬季限定の製品であると言う。
製品名「濃いシチュー ホワイトショコラ」。
ネットで製品の紹介を呼んでみると、

とろ~りとホワイトショコラが溶け込んだ新感覚スイートシチュー
濃厚なクリーム感、ミルク感が特徴の「濃いシチュークリーム」に、"ホワイトチョコレート"の旨みとコクを加えた冬季限定の新感覚シチュー。

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とのこと。シチューにチョコの「旨み」。その味がいかなるものか、残念ながら試してはいないのだが、気にかかるのはそのパッケージである。

クリーム色のロゴに紺色の縁取り。
背景は、ブルーグレー。商棚に並べられたシチューのパッケージの中でも異彩を放つ色彩をしている。
このパッケージの色構成、ショコラを意識したのだろう。遠めに見ればなるほどチョコレートのパッケージのようにも見える。新感覚を訴える上で、その斬新さを表現したのも理解できる。しかし、残念な事に、新感覚を求めるために、私たちがシチューにも求めているクリーミーな旨さ、この商品の特長であり、最大の魅力でもアル「濃い」のイメージをほとんど感じることが出来ない。最も目立つのは、背景色になっているブルーグレー。

確かにクリーム色と紫色は正反対の色、いわゆる補色の関係になっていて、お互いの色を最も引き立てる2色でもある(赤と緑、トマトとレタスのサラダが鮮やかに見えるように)。

たた、クリーム色を引き立てるための紫色ならばよいが、くすんだ、灰色がかった紫色を使うのはいけない。シチューの濃厚さを引き立てる仕事をしないばかりか、青系統の食欲を減退させる効果だけが残ってしまう。

その昔、「オホーツク流氷カレー」という、不味そうに見えるが実は美味しいカレーというのが話題になったが、青と言う色はその位、不味い色の代表的存在で、食品の味のイメージとしては非常に期を使わなければいけない色なのだ。

オホーツクカレー.jpg

それにしても、そもそもなぜシチューにチョコなのだろう。なるほど、シチューもチョコも、クリーミーでミルキーでコクがあり、という共通のキーワードを持っている。ならば、と言うことなのかもしれない。

そういえば、以前これと同じ現象を目にしたことがある。
缶コーヒーである。缶コーヒーは、嗜好品としてタバコと非常に似通った位置関係にある。表現も爽快、味わい、深みといった言葉が好まれる。ならばタバコの世界で受けているキーワードをコーヒーにも付けたら。たぶんこうして出来上がったのが「メンソール缶コーヒー」である。

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パッケージはこれまでの缶コーヒーではほとんど無かったライトグリーン。まさにメンソール。ただ、どうやら売り上げを見るに缶コーヒーのファンいまひとつピンときていない様子だ。

デボノ博士の「6色ハット」発想法

物事を客観的に見る、ことの有効性はいろいろなところで言われている。
例えば、一つの新製品に対しての自分尾感想だけでなく「客観的に」分析してみる。
お客さんお立場にしてみたらどうか。
初めてこれを観た女性にとってはどうか。
これは、いわゆるマーケティングの世界だろう。

このほかにも、色彩を活用して「客観視」が可能となる方法がある。
『デボノ博士の「6色ハット」発想法』
というもの。
「白」「赤」「黒」「黄」「緑」「青」
の帽子を利用して、それぞれの「立場」を決め、その立ち位置から意識的に商品を眺めて、様々な感想をぶつけ、分析を行うと言うもの。

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白帽子・・・客観的思考(事実や統計を重視し、客観的に思考する)
赤帽子・・・直感的思考(自分の感情や感覚、美意識を重視)
黒帽子・・・否定的思考(否定的なポジションから疑問、分析を重視)
黄帽子・・・肯定的思考(楽観的、前向きに判断)
緑帽子・・・創造的思考(目の前のものからさらに新しい提案を生み出す方向へ)
青帽子・・・俯瞰的思考(他の色の意見などをしっかり取り入れ、良い方法を見つけ出す)


このそれぞれの立ち位置を6人で分担し、さらに色を入れ替えながら様々な「客観的」意見を出すのでも良いし、あるいは一人で意図的に役割を切り替え分析していくのでもよいだろう。

例えば、揚げないポテトチップといった新商品を見て
普通であれば、単に「好き嫌い」で判断しがちであるのを

白帽子・・・これまでより、歯ごたえがよく、カロリー的には女性に人気が出そう
赤帽子・・・揚げてないのなんて嫌い!
黒帽子・・・そもそもカロリー気にする人がポテトチップ食べないし。
黄帽子・・・女性が集まるホームパーティーでいいのでは!
緑帽子・・・いっそ、ダイエットポテトチップという名前で、女性好みのバリエーションを増やせば!
青帽子・・・「売り」の部分は白を参考に、緑の客層で、黄色のような広告にするのがよいかも!


といった具合だ。自分が本来どんな性格をしているかに関わらず、自分だけでは考え付かなかった視点を持つこともできる方法である。

それにしても、この役割分担は実に面白い。
先日「ゴレンジャー」の役割分担の話を差し上げたが、これに近い世界である。

〇赤 →熱血漢のリーダー。考えるより先に行動する面あり。
〇青 →いつも冷静さを失わないサブリーダー。知的なアドバイスが冴える!
〇黄 →明るく純朴な力持ち。
〇ピンク →ヒロイン。落ち着いた母性的な面もあり。
〇緑 → 無邪気な癒し系。

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最近の戦隊シリーズでは黄色が抜け、黒が入っている。
デボノ博士の「6色ハット」が、商品を6つの立場から分析する手法だとしたら、戦隊シリーズは、ドラマのストーリーを5つ(6つ)の立場から盛り立てるもの。俳優はその色のキャラ設定にしたがって演じているともいえる。


消えたゴレンジャー

1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』以来35年以上、男の子に熱い支持を受け続けるスーパー戦隊シリーズ。
私が数十年前に親しんでいた頃は、男性4人に紅一点の女性が加わった5人組で悪と戦うストーリーであった。最近ふとした拍子でこのシリーズの最新作を見たのだが、悪と闘う基本形は変わらないのだが、色彩の面で面白い変化に気付かされた。

壮年の皆さんなら、元祖『ゴレンジャー』の5人組の色構成を空で言えるかもしれない。

〇赤 →熱血漢のリーダー。考えるより先に行動する面あり。
〇青 →いつも冷静さを失わないサブリーダー。知的なアドバイスが冴える!
〇黄 →明るく純朴な力持ち。
〇ピンク →ヒロイン。落ち着いた母性的な面もあり。
〇緑 → 無邪気な癒し系。

ゴレンジャー.jpg


色彩マーケティングの世界では、その人が好に身に付ける色彩とその性格や行動の傾向に共通性があるといわれている。原作者の石森正太郎の凄さか、この5人の性格付けと色は、色彩学から見てもまさに正解で、ドラマの中での役割分担までもが見事に色で表現されていた。

その後、時代の変化にともなって色の構成は少しずつ変化しているというが、最新作の『獣電戦隊キョウリュウジャー』では、人数一人増の6人(6色)となって、その性格付けも次のようになっている。

〇赤:無鉄砲で天然。自然体で好奇心旺盛。
〇青:真面目で地味。
〇ゴールド:天真爛漫。子ども好きだが女性が苦手な繊細?な面を持つ
〇ピンク:陽気で明るい性格のお嬢様
〇緑:クールで生真面目な性格で人見知りが激しい
〇黒:女好きのお調子者でお喋りかつ明るい性格。自分勝手で捻くれた態度も目立つ。

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色彩的には、黄色がゴールドに変化し、黒が加わったと言うものだが、それぞれの色の性格付けの変化は大きい。
まず黒の出現。
ヒーロー者で、「権力」や「重厚」、「距離」、「孤立」をキーワードとして感じてしまう黒はなかなか使いづらい色であるはずだが、いつからかは不明だが敢えてここに入れられている。ヒーローに最も必要な要素は「格好良さ」「活力・強さ」「正義」が基本であるが、黒が担当する部分があるとすれば、それはこうしたヒーローの部分ではなく、むしろ共感の部分かもしれない。なるほど「おしゃべりで明るく」=周りに合わせて気を使い、「自分勝手で捻くれた」=本当は違う、とやや斜めから考えてみると、たしかにこんな大人的な子供が増えているようにも感じる。

次に気付いたのは、色と性格の不一致。緑=クール、ゴールド=天真爛漫。私たちが日常の中で感じる色のイメージとドラマの中の性格設定が異なるのには、私がまだ気付かない関係の変化が子どもたちの中で進行しているということなのか。ドラマの決め台詞のようだが「実におもしろい!」。

そして最後に、「癒し」と「母性」キャラの不在。バカッぽい設定のキャラは存在するが、昔の緑やピンクが受け持っていた二つの役割が希薄になっている。もうこの二つの役割は、子どもたちの周りには存在せず、共感も得られないと言うことなのか。うーん「実におもしろい!」。

あぁ、美しい! ブルーノートのジャケットは調和の美

今更ながら感じるブルーノートのジャケットの素晴らしさ。最近LPを再び購入することが多くなり改めてそのジャケットの完成度に感激する。手に取ったとたん直感的に感じる、クールな格好よさ。なにより凄いのは、ブルーノートのアルバムであることが直ぐに分かる。イメージを伝え、かつオリジナリティーがある。このレーベルのジャケットデザインには、まさにこんな色彩の効果と調和の美が惚れ惚れするほど詰め込まれている。

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この強さと分かりやすさの正体は何なのか。
もちろん色から見た場合だが、一つに単色調和の世界を、非常に効果的に使っていることがあげられる。
単色調和とは、無彩色と有彩色の組み合わせが調和する法則のこと。
つまり、黒や白、グレーなど(色味のない)の無彩色と、有彩色を一色だけ組み合わせる。またこの応用として、単色のブルーやオレンジなどにわざと一色化した写真でバリエーションをつけている。この組み合わせは多くの場合、心地よい調和の状態となる。

さらにこの無彩色がタイトル文字ではなく、写真のほうに使われている効果もある。
カラー写真の場合、もちろんその画像には色が付いている。色には一つ一つ固有のメッセージがあり、例えば赤を見て「強さ」や「情熱的」「活動的」といったイメージを見た人が持つ。こうしたものの色は、写真の場合、現場そのものの状態を性格に伝える効果があるが、反面、写真全体のストーリーを邪魔してしまう部分もあるのだ(その色自体を旨くストーリーに組み込んでいる場合も多いが)。

本来伝えたいメッセージが写真にあるとすれば、色はテーマのシンプルな伝達を脇にそらせてしまう側面がある。
例えば同じ情景をカラーとモノクロで撮った場合、モノクロ写真に「物語」をシンプルに感じるような気がするのもこの影響がある。
このモノクロ(や一色)の写真の「物語」性をうまくジャケットのデザインにしているのも、ブルーノートのジャケットに私たちが惹き付けられる点かもしれない。

色の常識を超えた青い店「居酒屋戦艦大和」

もともと新宿には変なお店、なぜ?と思うようなお店が平気で営業している。ただ巨大なロボットと女の子をお酒も飲まず、お弁当のようなものを食べながら眺めるロボットレストランなども立派に営業していたりする。
色彩観察をしている私の立場から見た「変だなー」と思う店ももちろん存在する。その一店が「居酒屋戦艦大和」という店だ。

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店内は(まあ普通のライティングの部屋もあるようなのだが)、海底、船内をイメージしているのか、真っ青。お店のサイトから写真を拝借してきたが、店内はこんな感じである。おぉ、真っ青!

私は、様々なセミナーなどで、食べ物を出す場面、特に飲食店において青などの感触は、食欲を落とし、食べ物をまずく見せるので御法度!青っぽい光の蛍光灯もすぐに取り替えるべし!家のリビングでもぜひ蛍光灯でない照明を!と繰り返し訴えてきたものだが、そんな色彩と食欲の常識を見事に裏切るお店である。

店内の青い内装。そして青く反射するライト。写真だけの現象かもしれないが、本当に現場でもこんな環境であったとしたら(申し訳ないのだが、私は勇気がなく現場で飲んでいません)。

色彩に関する面白い実験がある。パーティー会場のライトを急に青に反転させ、主席者全ての食欲(の減退)を観察する(気持ち悪くなってしまった人もいた)というもので、この結果、食欲減退はもちろんだが、テーブルの上の青い光が当てられた食べ物を見て吐き気をもよおした人もいたという。このお店は、まさにこんな実験を新宿のど真ん中で日々続けている、ということである。

ちなみに、食欲をなくし、ダイエットに効果がある食べ物に、こんな青いゼリーもあるくらい、青は食欲を減退させる効果がある。

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しかし、1年近く前にすでに営業を開始したこのお店が、まだ立派に営業しているのだ。戦艦大和は食欲にもまさる存在なのか。食べ物を目的に行く客が少ないのか。それとも、色を食欲の常識が変化しているのか。近々この店を訪れ、ご報告を申し上げようと思う。
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