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「コク」は何色?(第2回)

 前回に続き「コク」は何色をしているのか、をお話ししたいと思います。
 今回はまず、コクといえばお馴染みの「出汁」製品が何色をしているのかを見てみましょう。

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 皆さんも、たぶんどこかでご覧になったことのあるパッケージが並んでいます。実に分かりやすい。そう、出汁の世界ではコクの色は決定済だったのですね。コクは赤。ほとんどすべての製品がこの解釈の元、パッケージを作っています。
 しかし、不思議です。私たちがおいしい出汁の効いた料理を目にしたとき、赤を連想することはないし、そもそも料理の周辺でこれほどはっきりした赤を目にすることもあまりありません。お椀の内側が朱色という場合はありますが、せいぜいそのくらい。そもそも私たちが出汁と言われて思い浮かぶ映像は、あの黄金色の液体の姿でしょう。それがなぜ、揃いもそろって赤い色を中心にしているのか。

 これには、出汁のもとの元祖ともいえる「ほんだし」の存在が大きく影響しています。「ほんだし」のキャッチフレーズは「和風だしのもと」。つまり和の基本中の基本を作る味、を表現したかったのです。和を象徴的に表現する色の一つといえば赤。この色の中で最も目を引き、しかも和の世界をイメージできる赤=味の素の「ほんだし」というイメージを「ほんだし」が定着させることに成功したのが、その後の他の製品にも大きく影響しています。

 さらに赤は販売色の王様。これを最初に取った製品はトップセラーでありながら、ロングセラーになる確率が非常に高いものです。味の素は塩の世界でも赤=うまみ調味料という世界も確立しています。カップヌードルも白地に赤の組み合わせによって、あの厳しいカップ麺の世界でロングセラーとなっています。
 「ほんだし」は、出汁=和=「ほんだし」というイメージを定着させることによって、出汁の世界では、少なくとも赤でなければ出汁に見えない、というところまでイメージが定着してしまっています。しかし出汁は、コクの世界においては代表的ではありますが、あくまでも一つのジャンルでしかありません。

 ではそのほかのジャンルにおいてコク=○色を定着させた製品はあるのか。実はほとんど存在していません。先ほども申し上げましたが、このジャンルでコクといえばこの色!と定着させることができれば、いまだに「ほんだし」がいまだ不動の地位にいるような世界を作ることができるでしょう。コクを考えるうえで大切なのは、一つの方向として、
 
 コク=「らしさ」+「深み」・「上質」
 「深み」・「上質」=「高級感」

 ということが言えそうな気がします。
 「らしさ」とは、その製品「らしさ」のこと。製品のジャンルを全く想起できないような色では、消費者に正体が伝えられず、簡単に言ってしまえば「手にも取ってもらえない」商品になってしまいます。

 辛い製品は辛い色。
 クリーミーな製品はクリームの色。
 オレンジ製品はオレンジ色。
 
 簡単に言ってしまえばこうした「らしさ」がなければ、まず製品は理解されません。
 そのうえで、差別化として、そのジャンル特有の「コク」を乗っける必要があるわけです。

 (次回:『ビールの旨さは「キレ」と「コク」?』に続く
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